2009年1月27日火曜日

資本主義はなぜ自壊したのか

以前は新自由主義、構造改革、グローバリズムの騎手でもあった中谷巌氏が”自戒の念”を込めて、転向とも言える論文を発表した。
私も小泉政権以降、彼の進めた構造改革は、論理的にも筋が通っているとは思いながらも、日本の社会、何かおかしいと感じ続けていた。そこに昨年9月の投資会社リーマンブラザースの破綻以降、ここ数ヶ月で世の中があっという間に変わってしまった。特に心が痛んだのが、ネットカフェに泊まり続けるワーキングプアの姿や、今般の非正規雇用社員の首切り問題。「ひとりがみんなのために、みんながひとりのために」という相互扶助の精神はどこへ行ってしまったのか。今や雇用人口の3割が非正規社員。所得再配分後の貧困率がアメリカに次いで第2位。貧しいながらもみんなで楽しく生きていた昭和の時代は一体何処に行ってしまったのか。
グローバリズムや新自由主義は、自己責任による自由や民主主義、頑張った者が報われる成果主義など、耳障りのよいスローガンに誰もが疑うことなく、バブル以降盲進してきた。その結果が年末に何万人も住処も追われ、職もなくし、絶望のどん底に突き落とされる。やさしい日本は一体どこにいったというのか。
安心・安全な日本はどこに行ってしまったというのか。
著書では、こうしたグローバリズムや新自由主義の弊害(世界経済の不安定化、所得格差、環境破壊)について、反省を込めて分析しているが、一時期は片棒を担いだ人間が著書での懺悔で許されるのかとも思うが、まあ反省しないよりはよしとしようか。
氏は何よりも所得格差の是正が最優先課題であるとするとともに、人間と人間のつながりといった社会システムの再生、そして安心・安全な暮らしができるような社会福祉システムとして、消費税の大幅アップ(20~25%)と還付付消費税の導入や所得税の最高税率のアップによる所得の再配分が必要としている。
以前にもブログで描いたが、高福祉社会である北欧フィンランドでは大学教育が無料で受けられるのであるが、その大学生が国のために働きたいと言い切ったことがとても驚きであった。高福祉社会では働く意欲や競争心がそがれ、国の経済競争力の低下を招くという人もいるが、実際はそうではない。将来に不安のないことが第一に必要な条件であると思う。現に私も国立大学を卒業しているが、卒業以来、何か国のために役立ちたいという思いをもっている。ところが今の現状を見れば、ワーキングプアの若者や解雇された非正規従業員にとっては、今を生きるのがやっとで、将来に対する希望や夢は描く余裕もないのではないか。そしてそういう状況が続けば、頑張ってという気力さえ消え失せ、絶望と無気力の中で一生を送らざるを得なくなるのではないだろうか。こうした状況はとてもまともな社会とは思えない。私にも何かできることがあるだろうか。昨年の年末から強くそうしたことを考えるようになった。

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