2009年1月30日金曜日

シッコ(Shicko)


社会批判のドキュメンタリー映画を作り続けているマイケルムーア監督の最新作。
今回のテーマはアメリカの医療制度。いつもは多少苦笑を取るような撮り方をするのであるが、今回はそういうものはほとんど見られず、いかに深刻に監督自身が受け止めているかも感じられる。
 アメリカの医療制度がここまで疲弊していることに正直驚いている。大体数の国民が疲弊している一方、いわゆる勝ち組のエリートたちはますます肥えて行っている。こうしたアメリカの利益至上主義の一部富裕層によって、今回の世界的経済危機が起こされたかと思うと何とも悔しい限りである。

国民皆保険が西側諸国で唯一ない国。世界一の経済大国にあって、無保険の人が約5000万人いる。譬え保険に入っていたとしても、保険金がなかなか支払えない。病気になったら破産の憂き目に合う人も多い。映画の中では色々なエピソードが紹介されているが、中でも一番ひどいと感じたのは、保険の契約条項の中に、救急車を呼ぶときは、事前に保険会社の了解をとらなければ保険は適用されないというのがあること。それに対してある女性は「一体いつ連絡すればよいのか?」と。それを聞いて吹き出しそうになるが、そうした非常識がまかり通っているのが今のアメリカの医療制度のようだ。
行き過ぎた市場原理の導入と利益一辺倒の産業体質。保険金の支払いを否認する件数の多い医者が優遇される。人の命に関わることについては市場主義や利益主義を導入すべきではないのだろう。
日本もバブル崩壊以降、アメリカのこうした市場主義を積極的に導入し、自由競争や自己責任という、あたかも自由主義の推進といった印象を国民に与え続けてきた。昨年の高齢者医療制度はその最たるものである。分野を選ばず、かつ行き過ぎた市場原理の導入や規制緩和は、国を台無しにしてしまう。国民が本当に安心して暮らせる(怠けるのではない)国づくりが本当に必要である。日本も累積債務がどんどん増えていって、財政難からいつアメリカのようにならないとも限らない。私たちもまじめに税金を誰のために使っていくのか、そして日本の国の形とは何なのかを真剣に考えなければならない。

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